ESP-WROOM-32 ( ESP32 ) の保護機能付き電源強化対策の実験

ESP32 ( ESP-WROOM-32 )

こんばんは。

前回の記事に引き続き、ESP-WROOM-32 ( ESP32 ) の電源強化実験考察です。

前回の記事ではUSB電源の突入電流(インラッシュカレント)の振る舞いを測定し、固定抵抗で5V側の電流制限をしてみましたが、それはやめた方が良いという結論でした。

今回は保護機能付きで、もっと効果的な方法が見つかりましたので報告します。
その代わり、電子工作としてはとても細かいハンダ付け作業が必要になります。

以下の電源強化策は、ESP-WROOM-02 ( ESP8266 )にも使えるものだと思います。

因みに当ブログで紹介しているものは、全て私的主観に基づいた、趣味程度のアマチュアレベルです。
動作やその他トラブル等に関して、一切保証しません。
また、電流測定についてはブレッドボード上による大まかな目安程度で、正確なものではありませんので予めご了承ください。
もし誤っていたらコメント等でご連絡いただけると助かります。

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ESP-WROOM-32 ( ESP32 ) の電源対策おさらい

ここまでの記事で、ESP-WROOM-32 ( ESP32 )の電源設計のおさらいです。
USBポートやAC-USBアダプターから電源を取る場合についてです。

●電源投入時の突入電流によるVBUSラインの電圧ドロップ(降下)を330mV以内にする。
これは、スリープからウェイクアップ時の遷移や、リセット動作時も同様。

●USBケーブルが長いもの、または粗悪品だった場合、VBUS電圧ドロップ(降下)が大きいので、できるだけ短く太く品質の良いものを使う。

●VBUS 5V ラインに接続する素子(チップインダクタなど)は突入電流値を考慮して、余裕のある許容電流値のものを選ぶ。

●ESP-WROOM-32 ( ESP32 )単体使用時 はリセット動作時に約600mAを消費するので、それ以上の出力の余裕のあるLDO 電圧レギュレーターを選ぶ。
そして、高速応答で、できるだけ低ドロップアウトのものを使用し、3.3Vラインが電圧ドロップしないものを選ぶ。
また、入力側の動作電圧範囲が広いものを選ぶ(5Vラインの電圧降下が大きい為)。

●3.3Vラインのコンデンサ容量を大きくすると、電源投入時のVBUS 5Vラインの突入電流時間間隔が長くなってしまう。
ただ、VBUSラインの電圧ドロップが330mV以内に収まっていて、電流値相当の電荷移動が50μCを超えなければ、容量を大きくしても差し支えない。

ザッとこんなところです。
以上をよく考慮して、以下の実験をご覧ください。
(※以下、ESP-WROOM-32 のCPUは240MHzでWi-Fi使用時の場合です。
内蔵Flash等は一切使わない場合ですのでお間違いなく)

今回使った測定器について

今回使った測定器は以下の記事でも紹介していますが、参考のために改めて紹介します。

ESP-WROOM-32 ( ESP32 )の消費電流を電流プローブ無しで測定してみました

USBオシロスコープ PA-S2000/E ( P&A Technologies )

USB接続デジタルストレージオシロスコープ メモリ1M搭載モデル PA-S2000/E
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ずっと前に買ったものです。
サンプリングレート100MS/sec で、1Mポイントのストレージ機能があります。
パソコンにデータをすぐに取り込めて、小型で持ち運びが便利なのに高性能、しかも日本製というところで、私はとても重宝しています。
ちなみに、プローブは別売りで、かなり高価でした。

PA-S2000用プローブ x1/x10 PA-S2000/PRB
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今回の突入電流測定では、立ち上がりがかなり高速なため、サンプリングレートは100M/sくらいないと測定できません。

LCRメーター U1733C ( KEYSIGHT )

要するにインピーダンスメーターです。
これもずっと前に買ったもので、当時のメーカーはAgilent で、今はKEYSIGHT (キーサイト)に変わっています。
これについての詳細は以下の記事を参照ください。

ESP-WROOM-32 ( ESP32 )の消費電流を電流プローブ無しで測定してみました

ハンドヘルド型で、発信周波数が100kHzで測定できて、分解能が細かく、持ち運び用としてはかなりの高性能です。
測定リード線の抵抗値等をキャンセルしたり、ESR測定機能もある優れものです。
値段もそこそこしますが、据え置き型のものに比べればかなり安価です。

これは、コンデンサのESR ( 等価直列抵抗値 ) 測定や、シャント抵抗値の測定に必須です。
発信周波数は100kHz以上無いと、鋭い立ち上がりの突入電流のESR値を算出できないと思います。

電流検出抵抗(シャント抵抗)

電流検出用チップ抵抗100mΩのものを4つ連結してハンダ付けしました。
今回は新たに作り直し、LCRメーター U1733Cで測定した結果は

100kHz測定時 0.3911Ω

でした。
実は、以前の電流測定で測定リード線の抵抗値を差し引くことを忘れていましたが、今回はしっかり差し引きしました。

実際はブレッドボード上で使用するため、これで正しい電流測定ができるわけではありませんので、あくまで大まかな目安程度と考えてください。

各種コンデンサのESR (等価直列抵抗)測定

後で述べますが、コンデンサの ESR (等価直列抵抗)が電源の突入電流に大きく関係しているので、それを測定しなければならなくなりました。

下図の様に有りったけの手持ちコンデンサのESR を測定してみました。
LCRメーター U1733C の発信周波数は100kHz です。

なぜ、100kHz という周波数にしたかというと、突入電流(インラッシュカレント)を測定する場合、充電電流の立ち上がり波形ピークが10μS幅くらいなのでそうしました。
突入電流(インラッシュカレント)は一瞬ですが、交流っぽい挙動があるので、直流よりも100kHzで測定した値を参考にした方が良いと思いました。

ただ、ここで注意していただきたいのは、極性があるタンタルコンデンサや電解コンデンサは破損する可能性があります。
LCRメーターのような交流発信機には接続しない方が良いです。
私はその危険を承知しつつ、敢えてタンタルや極性有り電解コンデンサを測定しました。
本来は無極性(バイポーラ)電解コンデンサか、セラミックコンデンサ、フィルムコンデンサを測定すべきですので要注意してください。

あと、もう一つ注意点ですが、コンデンサのESRを測定する場合、測定リード線の抵抗値を差し引いておくことが重要です。
測定リード線をショート(短絡)させて、予め抵抗値を測っておいて、後で差し引きます。

この結果から、ESR が最も低いのはやはり積層セラミックコンデンサでした。
圧倒的低さですね。
これはどこでも売っている普通の積層セラミックコンデンサです。

次にESRが低かったものは、左から2番目の緑色のもので、オーディオ用の電解コンデンサです。
品名は、

●オーディオ用無極性電解コンデンサー10μF50V85℃ ニチコンMUSE・ESシリーズ

ただ、同じMUSEシリーズでも右から2番目の以下のものはESRが大きいですね。
これは、

●オーディオ用無極性電解コンデンサー10μF25V85℃ ニチコンMUSE・ES

です。

そして、最もESRが大きいのはこれでした。

日本ケミコン
KMGシリーズ
10μF 16V 105℃

このESR値は大きいものと小さいものでそれぞれ一長一短があります。

これらのアルミ電解コンデンサは、RSコンポーネンツさんのサイトでかなり豊富な品揃えがあるので、いろいろ購入して測定してみると面白いと思いますよ。

ESRを調べて適材適所に使うことによって、突入電流(インラッシュカレント)に大きく影響してきます。
詳細は後述します。

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